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吃音におけるメンタルリハーサルの効果

吃音
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 メンタルリハーサルという言葉はあまり聞かないと思います。まず、この言葉の意味を紹介しておきます。

過去の発話や行動で失敗してきた場面に対し、自然な発話や適した行動をイメージし、リハーサルすることで、その場面に対する恐れを脱感作し、自然で無意識な発話を再学習しようとする訓練法である。

 過去に、吃音で失敗した場面があると思います。その場面を振り返ってその時の嫌な印象を取り払うということです。そうすることで、過敏になった恐れを排除するという方法です。

 このような方法を「間接法」といいます。それとは対照的にシャードイングや流量性形成法などは「直接法」といいます。イメージとしては、メンタル的な訓練を「間接法」、行動による治療法を「直接法」としてわけることができます。

 今回の事例は間接法のメンタルリハーサルでの治療の事例です。参考にした論文はこちら

事例の訓練の手順

 今回の訓練の手順を簡単に紹介します。

  • 年表方式のメンタルリハーサルを行った
  • 訓練開始から終了までの約2年10か月の間に50回の面接をおこなった
メンタルリハーサルの方法

 メンタルリハーサルでは、現在の吃音にかかわる悪化要因だけではなく、過去に発生した悪化要因も軽減するために、過去の悪化要因に着目して吃音年表を作成し、幼児期の場面から現在の場面へと時間軸に沿って、エピソードに関係する恐れに対応した拮抗刺激をイメージして脱感作した。

 上の手順で作成した年表した下のようになります。

  メンタルリハーサルの拮抗刺激と実施場面例としては下のように行っています。

場面例:相手が見えない対人場面での対応として「電話をかけたり、電話を受けたりする場面」

1)問題点

 電話をかけたり、かかってきた電話に出る場面に対する恐れがある。友人の家に電話をかけた時に友人の家族が出て言葉が出なくなり、いたずら電話だと思われて電話を切られた。また、かかってきた電話に出たとき、途切れ途切れに話してしまい、電話の相手から電話の故障と勘違いされた。

2)吃音の悪化要因

 電話先で相手が自分のことをどう思っているのか気になり、うまく話すことができない。自分に対する相手の評価がとても気になる。うまくなめらかに話せない自分に対し、もっとなめらかに話したいという思いがある。

3)拮抗刺激の内容

「友人宅に電話をかける場面」で呼び出し音が鳴って相手で出るのを落ち着いて待つ→友人の家族が出て、友人に代わってくれるようにスムーズに頼む→友人が出て楽しく話すことができた。

メンタルリハーサルの頻度や回数

 このメンタルリハーサルは初めは60分の面接を週1回行っていましたが、安定した自習が可能になった21回目以降は面接を約2週間~1か月に1回にしています。

 自宅では就寝時に毎日平均10分、1回1~3場面程度繰り返した。

訓練経過

1)第1期(訓練開始から20回までの半年間程度)

  • 自発話でブロックや挿入が多発していた
  • 面接では言語聴覚士がリラクゼーションを誘導してイメージを描かせながら実施
  • 平行して自宅での自習が正しく行われているか確認

2)第2期(20回から35回までの1年程度)

  • 本人から「発話に対する恐れが減少してきた」
  • メンタルリハーサルがうまく行えないことが増えたので再度、面接で確認
  • 発話への積極性が増した

3)第3期(36回から50回までの1年半程度)

  • メンタルリハーサルを自宅で安定的に実施できてきた
  • 面接場面でもブロックの頻度と持続時間が減少
  • 解除反応としての挿入も減少してきた
  • 「まだ気になるが、気にならない場面も多くなったきた」
メンタルリハーサルの結果

 今回の事例のメンタルリハーサルの結果はこちらになります。

  結果を見ると、100文節あたりの吃音頻度も大きく減少していることがわからいますね。また、自己評価としても訓練開始時よりも大きく変化していることがわかります。

個人的な考察

 今回のような「間接法」による吃音治療は「直接法」と比べると事例が少ないと思うので貴重な事例になっています。いわゆる潜在意識に働きかけて予期不安を減少させることも目的とした治療になっています。

 個人的に多くの論文の事例や個人的な体験としては、一番の原因は「心」の予期不安からくる緊張だと思っています。

 一見すると、心の問題であれば今回の事例のように「心」や「意識」の訓練をすべきであると感じる人も多いように思う。しかし、潜在意識は知識や実体験から形成されている側面かなり大きい。

 よく僕は吃音治療を自転車に乗ることに例えています。今回の「直接法」と「間接法」を自転車に乗ることに例えると、自転車に乗ることが怖いと感じる人に対して、どのようにアプローチをするのかという違いになります。

 直接法であれば、実際に自転車に乗る練習をすることで、失敗もあるが小さな成功体験を積み重ねることで「できる」という経験を増やして自転車に乗る恐怖を排除するというアプローチになります。

 間接法であれば、自転車に乗るこをイメージすることで嫌な印象をよりいい印象にかえるトレーニングをすることで、自転車に積極的にのることができるというアプローチになります。 

 違ったアプローチながら「潜在意識・予期不安の排除」という同じ目的を達成しようとしているのがわかります。

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