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小学3年生の家庭での吃音治療

吃音
この記事は約6分で読めます。

 今回も1つの吃音治療の事例を紹介します。今回の事例はこちらの論文を引用します。

 小学3年生という時期での吃音は幼児期のように自然治癒を期待できる年齢ではなくなってくるので、積極的な指導を行うことが求められてきます。

 しかし、多くの人が「どうやって吃音を解決すればいいのかわからない」という状況に陥っているのではないかと思います。今回の事例を参考に自宅での吃音治療を行ってみてください。

今回の治療の内容

 今回の事例は難発性の吃音がある小学3年生の事例になります。今回は、マスキング法と斉読を組み合わせた方法で吃音治療を行っています。

 また、治療期間は8か月とある程度長期の期間になっています。

学童期の子供の治療で配慮する点

  • 吃音そのものへの治療を強く意識させ過ぎないような技法
  • 日常の家庭学習習慣の中に治療の一部を組み入れられるような技法
  • 子供自身が実行しやすく、実行の結果を確認しやすい技法
  • 毎日の実行の際に、補助者による実行への協力が得られやすい技法
男の子の特徴

症例:男児・8歳・小学3年生

主訴:吃音、初発音が出にくい。普通に話していることが多いが、時々、話し始めの音が出にくく苦しんでいる。数秒間、長い場合には10秒ほどのブロッキング現象がみられ、下を向いて息苦しそうにし、その後で音が出ている。特定の音にのみ吃音が生じているのではない。しかし、歌をうたう時には吃音はない。

家庭でも吃音は見られる。なるべく本児の吃音については気にしないようにしているが、時に「もっとはっきり・・・」とか「しっかり・・・」とか言ってしまうことがある。

  • ① 難発性の吃音であり、時々、数秒問にわたるブロッキングがみられる。緊張場面での吃音が比較的多い。
  • ② 症状に対するハンディを受容しながら精神的、行動的に萎縮することなく授業でも積極的に発表し、友達・教師、家族の者との会話も比較的多い
  • 父親の叱責祖母からの干渉が多く、本児にとっては心理的圧力となっている。
  • ④ 帰宅後は外出せずに、好きなを読んだり、テレビを視聴していることが多く、近所の
    友達との交流が少ない。
治療方針
  • ① 家庭での本児に対する両親、祖母の関わり、養育態度を中心とした環境調整をカウンセリングにより行う。
  • ② 流暢なスピーチを形成するために、家庭での学習活動を積極的に利用できる治療技法として斉読法とマスキング法を併用する
  • ③ 毎日の課題実施の協力治療実行者として母親の協力をえる。
  • ④ 反復練習による自信の確立読み行動の安定化を図る。
  • ⑤ 帰宅後の積極的な身体活動社会的交友活動の増加をねらう。
治療経過

今回紹介する論文では、合計13回の面談の経過報告が全て書いてありますが、ここではその中からいくつか抜粋してポイントになりそうな面談を書きますね。

■ 第1回面談(5月1日)

症状の経過:前回と比べて特に目立った変化はない。

本児への指導:吃音の状態をチェックするのに使用した「ジャックと豆の木」を用いて、斉読法修正マスキンク法のやり方について説明し、技法を実行する中で吃音が減少する状況を実際に体験させた。さらにこれを毎日家庭での学習の中で実行すること、読みの練習に使用する材料は、学校で使用している教科書の詩や短文中から以前に学習したものでもよいから自分が興味をもち、できるだけ読みやすいものを選ぶことなどの諸注意を与えた。

■ 第2回面接(5月22日)

症状の経過:最近の2週間程の間、やや吃音が目立ってきている。

課題の遂行:大体毎日実行されている。まだ自分から進んで実行するところまでに至っていない。最初に黙読をしてから斉読を行っている。

本児への指導:マスキングによる独り読み、斉読、マスキングによる独り読みを繰り返す。面接中の会話の中での吃音も前回よりもややきつくなっている。本人自身もこの状況には気付いている。

■ 第3回面接(6月19日)

症状の経過:吃音の状態は少しましになってきている。

課題の遂行:毎日確実に遂行されていない。短文でよいから毎日続けること、あらゆる教科の予習の場合にも、黙読やマスキング法を用いて本を読む習慣を身にっけるよう指摘した。

本児への指導:既習の詩を用いて吃音の状態のチェックと訓練法の練習を行った。学校での授業中のような形で立って読ませたところ、やや吃音がきつくなった。

■ 第5回面接(7月10日)

症状の経過:特に変化はない。

課題の遂行:家庭での訓練が確実に実施されてない日の方が多くなってきている。友達との遊びが増加してきたことに加えて、母親が他の治療機関へ変わりたいという気持ちが強くなってきたことが原因にもなっている。

本児への指導:通常の訓練を実施しようとするが、以前とは異なりあまり関心を示さず、乗り気でない。指示に対してもやや拒否的な態度も見せた。

■ 第7回面接(8月7日)

症状の経過:日常生活での吃音は少しずつ減っている。

課題の遂行:長らく用いていた治療用の題材(詩)は、大体暗記してしまったせいか、ほとんど吃ることなく読めるようになってきている。新しい題材(詩)に変えたところ、ア行音の吃りがきつかった。マスキングをさせても吃りが見られた。

本児への指導:吃音のチェックを行った後、通常の治療訓練を行う。

■ 第13回面接(12月19日)

症状の経過:日常の話し言葉、本読みのいずれにおいても、かなり改善がみられたので、今回をもって来所による相談を終了にした。

課題の遂行:大体確実に行われている。

本児への指導:会話、本読みのいずれにおいても、ほとんど吃音はみられない。現実の調子を崩さないように、今後も毎日練習する必要があることを説明した。初回に比べると、情緒の安定性が出てきて、向性も外向的に変化するなど性格面でもポジティブになっている。

個人的感想:今回の事例はリアル

 この事例をみてリアルだと感じたことは「結果が出ないと、治療・訓練を続けられない」ということです。

 今回の経過報告を見てもわかるように、治療を始めてから約2か月間は治療効果が出ていませんでした。むしろ、少し悪化しているようにも感じます。

 そうなると、治療を行う回数が減って、一時期は全く行っていなかった時期もあるようです。逆に、成果がで始まると積極的に治療を行うようになっています。そして、その積極性がさらに効果は加速させている感じがします。

 今回の治療期間は8か月ということでした。他の論文もいろいろ見てみると、期間はさまざまですが、共通しているのは頻度や積極性が高いと効果も早くでるということ。期間は約6か月~1年程度で考える必要があるということがわかります。

 成果がでない時期でも継続できる何かがやはり必要。今回のケースでは定期的に面談を行うコーチのような存在がいたことが大きいように感じる。

 しかし、挫折がありながらも吃音が改善しているのは大きな希望であることは間違いがないことがわかります。また、今回はマスキングと斉読での方法でしたが、治療法に優劣はなく、取り組みやすいものや本人がうまく発話できる方法を選ぶべきというが新しい視点でした。

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