リズム発話はリズムに合わせて発話をするという従来からある発話の方法になります。リズム発話はメトロノーム法ともいいます。メトロノームに一定のリズムに合わせて音読や発話をすることで流暢性を獲得します。
実際の臨床では、具体的な方法というのは決まっていません。例えば、初めに○○拍、次に△△拍の速さで訓練をしないといけない。など
決まっていない分、個人に合わせて訓練を組み当てていくことができる。しかし、個人で訓練をしようとすると、詳しい『型』が決まっていない分、「この方法で合っているのか」「正しくできているのか?」という迷いが起こります。
自分の行っている方法に自信がないと、治療への積極性や継続力が小さくなってしまう可能性が非常に高くなります。
事例をしっておくことで、1つのケースとして「方法と結果」を知ることができるので、個人で訓練をする時に、確信をもって取り組むことができます。
今回の事例はこちらの論文を引用しています。
リズム発話の事例を紹介する前に、リズム発話を使う目的と一度確認する必要があるかもしれません。
多分、全員がリズム発話の目的は『吃音を治す(軽減させる)』です。しかし、もう少し細かく分類することでより明確に「目的と結果」をフィットさせることができます。
「吃音」の問題点として2つわけることができます。
この2つにわけることができます。リズム発話ではこの内「流暢性の獲得」の目的を果たすです。
言語訓練の第1段階では,流暢な発話を達成するために、斉唱とメトロノームを併用して文章(詩など)の音読をした。
メトロノームは、はじめは毎分40拍、つづいて60拍、80拍、最後に100拍の速さに合 わせて、1拍1モーラのペースで音読をした。
毎回の訓練では、メトロノームに合わせての音読約30秒間を2~3回繰り返し、その後 メトロノームを止めて(リズム刺激の消去)同じテンポで音読を行なった。
今回の事例では「流暢性の獲得」をするために下の2つの方法を併用しています。
つまり、メトロノーム法を一定のテンポに設定しながら、吃音者と非吃音者が同時に音読をするという方法をとっています。メトロノームの速さは40拍、60拍、80拍、100拍の4段階で訓練を行っています。
という順番で訓練を行っているのがわかります。
音読における発話速度(モーラ/秒)はストップウオッチ(シチズン、LCクオーツ)で測 定し、この発話速度がメトロノームなしでも目標値の5%未満の誤差であれば「うまく合ってい る」、それ以上の誤差であれば「はやすぎる」あるいは、「 遅すぎる」と直後に結果をフィードバックした。
メトロノームのテンポを上げる基準は、同一テンポで完全に流暢な発話を連続する3回の訓練で達成した場合、と決めた。したがって、1回の訓練では2~3の異なるテンポ(40・60・80拍など)を並行して練習し、最小拍数(この場合40拍)から順に習得していった.
この訓練は、13回行い、メトロノームなしで任意のテンポ(1分間40・60・80・100拍のいずれか)で完全に流暢に(非流暢なしに)文章の音読ができるようになった。
※1モーラ:1単語
まず、メトロノームでリズムをとった状態で音読をして、次にメトロノームなしで同じリズムで音読ができるのかという内容になっています。
個人的に、意外だったのは「同じリズムを維持する」ということです。例えば、40拍という比較的ゆっくりな音読の時に、スムーズには早すぎるペースでも「あってない」という結果になるということです。「流暢に」「意図したリズム」で音読することが求められる訓練であることがわかります。
リズム発話と具体的にどのように使えばいいのかというのは、上の文章をみてもらうとわかると思います。ここからは個人的に思ったことや考察をしていきます。
気になる点はこの2つになります。今回の訓練では「リズム発話」と「斉読」の併用でしたが、斉読の使い方があまり書いてなかったように思います。
斉読を使うとすれば、メトロノームありの練習段階だけなのか、メトロノームがない場面の音読でも斉読をしているのかが気になる。
斉読があると、メトロノームがなくても他人のリズムにたよることができるので、かなり発話しやすいですよね。なので、おそらくは練習段階だけに斉読を使ったと考えられます。
今回の事例では、
この訓練は、13回行い、メトロノームなしで任意のテンポ(1分間40・60・80・100拍のいずれか)で完全に流暢に(非流暢なしに)文章の音読ができるようになった。
とあります。任意のテンポっていうのはどの速度で流暢に話せたのかな?っていうのが疑問でした。もし、40拍で音読ができるっていうのは、通常の速度と比べるとかなり違和感のある速度です。
この記事には引用していませんが、事例となる論文をもう少し読み進めていくと、この訓練終了後に再度、流暢性が保持できているのか検査している場面があります。その場面の音読では、「正常者と比べて著しく遅かった。」と書いているので、日常生活での違和感があるのかが気になる。
しかし、上の疑問は事例に否定的に意見というわけでなくて、むしろ、少し遅い発話リズムでも本人として満足ができていることがわかります。
早いリズムより、ゆっくりとしたリズムで話す方が流量性を獲得しやすいです。まずは、ゆっくりとしたリズムで流暢性を獲得して、その後に早いテンポで訓練をすることで、より短期間で改善を実感できて、自信をもった状態に変えることができると期待が高くなった。