今回の事例はこちらの資料が元になります。今回の事例はあまりない形式の事例になります。
資料のタイトルは「成人吃音の難発を短時間で解除する指導法」になります。まずはこの資料の内容をわかりやすくまとめて解説します。
多くの場合で、言葉が連続する「連発」、言葉を伸ばす「伸発」があって、その後に「難発」が起こるケースが多くあります。その理由を資料ではこう書いています。
当初は、繰り返しなどのもっと目立つ吃音症状を抑えるための対処行動として、構音機関に力を入れるなどしたものが定着する、という考えがある。また、難発はオペラント条件付けによって維持されるとも考えられる。難発を生じた時に、最後に頑張って言葉を言えるようとそれが報酬となり、その直前の行動が強化される。難発を生じた時に、最後に頑張って言葉を言えるとそれが報酬になり、その直前の行動が強化される。このように難発を維持する機構がある上に個人差も大きく治療は難しい。
つまり、「あ、吃るかも」と感じてから口に力を入れて頑張って言葉を出した結果、「口に力を入れる→言葉がでる」という条件付けがされてしまったということです。
これが厄介なのは、難発がでるたびにこの条件付けが強化されるということです。
この資料にあるように治療では流暢に話せるが、日常に戻ると流暢に話せなくなる理由としてこう書いている。
正常な構音能力はあるが、発話行為を意識すると、あるいは予期不安をもつと、構音器官が緊張し過ぎるような対処行動が触発され、流暢行為を妨害するのではないか考えられる。
これは吃音がある人なら、「その通り」と感じるはず。独り言なんかはそれに当てはまりますね。ボソボソいうのは、かなりスムーズに言えるけど、人に話すとなぜか独り言のように言葉がでてこなくなります。
今回の実験を簡単にいうと、「予期不安を感じる前に話始める」という訓練になります。吃音がでる流れとしては
「この言葉を話さないと」→「吃るかも(予期不安)」→「緊張が起こる」→「吃る」
という流れになります。これを
「この言葉を話さないと」→「反射的に話す」
という練習をするということです。
「『その単語を言うと吃りそうだ』などと感じる前に言う」という指示を与え、「どうぞ」などのプロンプトの直後に発語するよう教示する。難発や随伴症状が生じたら発声に至る前に中止させる。口囲等に禁漁が見られれば、自分の指で触って緩めさせる。プロンプトに間髪入れずに発語できるまで「もっと早く」という指示を繰り返す。
今回の結果では、数分以内に緊張なく、正常な構音で遅延なく単語を言うことができるようになったようです。
しかし、資料にも「他の状況や文章への汎化は今後の課題」と書いています。実際に、反射的に話すという状況はかなり限定された状況であると言えます。
この実験をみて、僕も反射的に発語をしてみました。周りに書いてる文字があった時に予期不安を感じる間も与えずには発語するとスムーズに発語できます。
このことからわかることは、「予期不安」が吃音を起こす最大の原因であるということがわかります。
今回の実験では「予期不安を感じるまでは発語をする」という仕組みをとりましたが、実生活では「予期不安を感じた時に解除」できる方法を習得する方が現実的だと言えます。