吃音で悩む時に、最も悩みが深いのが「ある特定の状況で吃音がでること」です。
みんなの前に挨拶や号令、スピーチをしたり、電話対応や放送をする時に「うわ、ヤバイ・・」って感じてしまいます。
この状況になっているのであれば、放置するのは少し危険です。
吃音が強化されていく仕組み
「オペラント条件付け」というものを知っていますか?簡単に説明すると、強化したい習慣には報酬を与えて、弱めたいものには罰を与えるというものです。
小さい子供に、悪いことをしたら怒って、良いことをしたら褒める。っていうのが典型的な例になっています。
吃音においても「オペラント条件付け」が関係しています。
例えば、初めの言葉が出てこない難発性の吃音で、なかなか言葉が出てこなかったとしましょう。
「どうにかして言葉を発さないといけない!」と思って、喉や口の筋肉に必要以上の力をいれてしまったり、手を振ったり、反動をつけたりすることで言葉が出てくる経験をしてしまうと、これが条件付けされてしまいます。
条件づけされると、次回以降も同じようにすればいいんだ!と脳が学習してしまいます。その結果、通常の状態からどんどん悪化していきます。
これを「随伴症状」と呼びます。
本来は吃音と関係ない部分に力を入れたり、反動をつけることで言葉を言いやすくします。短期的には言葉たまたま出たりするので、本人はラッキーと思うかもしれませんが、長期的には悪化につながります・
さらに、「言い換え」や「回避行動」もオペラント条件付けの1つになっています。吃音がでることを怖れて、言い換えをし続けたり、話さなくなったりすると、それが報酬になり習慣化してしまいます。
オペラント条件付け的には「随伴症状」や「言い換え・回避行動」はダメです。でも、僕も吃音に悩んでいた経験があるので、その場を乗り切るためにしてしまうのは感情的にはすごく理解・共感ができます。
その場をやり過ごすためにどうにかしたい!という気持ちはやはり強くなりますよね。
なので、いきなりゼロにするのは難しいですが、少しずつ改善していかないと!という気持ちはもっておいてください。
リッカム・プログラム
ちなみに、オペラント条件付けを使った吃音治療の方法もあります。
『リッカム・プログラム』という吃音治療の方法です。リッカム・プログラムの概要は以下の通りです。
創設者でディレクターを務めるマーク・オンスロー(65)は、シドニー大学にいた時、就学前の吃音がある幼児向けの治療法「リッカムプログラム」を同僚と開発した。吃音がある幼児にフィードバックすることが特徴の一つ。例えば、「つっかからずにしゃべれたね」「とてもスムーズに話せたね」などと声をかける。治療を受けた多くの児童がすらすら話せるようになるという。
https://globe.asahi.com/article/12185278
この記事は幼児向けに吃音治療なので、「上手くいったら褒める」とありますが、リッカム・プログラム自体は成人にも適応できるものです。
成人に適応した例を見てみると、流暢に話せる時はそのまま話してもらい、吃音症状がでると中断して、再度、スタートさせるというものです。
リッカム・プログラムは割と最近でてきた手法になりますので、詳しく知りたい人はググってみてください。
欠点としては、一人でできないことですね。正直、他の治療法と比べて圧倒的に効果的かといわれるとそうでもないので…参考までに。
焦点をあてるか
さて、「緊張する場面での対応」に話をもどしましょう。ここでまず、決めておかないといけないことがあります。
「緊張」に焦点をあてるか、「不安」に焦点をあてるか、です。どちらを選ぶかによって対処法が全く変わります。
ここでは詳しく話をしませんが、緊張よりも不安が根本原因にあります。なので、今回は「不安」を対象にして考えています。
※僕の吃音治療のオンラインサポートをうけている人は「応急処置的に緊張を解消する方法」のコンテンツもあるので見てください。
ちなみに、今回は「不安」に焦点をあてた対策を紹介しますが、ベストは「不安」と「緊張」のどちらも対策をするのがいいですよ。
いいイメージをする
いきなり結論をいいますが「いいイメージをする」です。もっと具体的に言えば「上手く話せている自分をイメージする」です。
これは僕の経験ですが「吃音が出そう。。ヤバイ。。。」と思った時には、自分で上手く話しているイメージが全くできていません。
例えば、明日にみんなの前で挨拶がある!と思ったら、ひたすら自分がスラスラ話している「いいイメージをする」ということが最も効果的な方法です。
もし、実際に言葉を口にだして練習する時間があるのであれば、本番をイメージして、話す練習でスラスラ話す体験をするのがいいです。
僕の場合は、普通に話してて「あ、言葉が詰まるかも」って思ったら、瞬間的に一度リセットして上手く話すイメージをします。
多分、これは練習しないと無理なので、すぐにはできないかもしれませんが、練習してコツをつかめれば意外と自然な感じで修正ができます。
より具体的にイメージしてもらいやすいように例を出すと、「歌手」や「芸人」のモノマネをする感じです。
歌を歌う時やモノマネをする時は吃音がでにくいですよね。この理由としては「発話以外に意識むくから」ということがありますが、僕はもう一つ理由があると思っています。
それが「鮮明にイメージできるから」です。歌手によって歌い方や声に特徴があったり、芸人にもそれぞれ特徴があります。
多分、歌を歌う時やモノマネをする時は頭の中にオリジナルの人をイメージするように表現してるはずです。
つまり、話す時も自分がうまく話すイメージをすることで予期不安が軽減されて、スムーズに話やすくなります。
これは「いいイメージ」とは逆の理由になりますが「吃音」については考えてはいけません。
多分、理論的には納得してくれると思いますが「吃音」について考えることで過去の経験から「吃る自分」が無意識に脳内再生されます。
これは無意識なので自分では「吃る自分」を意識していないと考えていても、脳内の反応としては「吃る自分」をイメージした反応になっています。
よく「吃音は忘れると治る」といわれますが、似たような理由です。
しかし、「吃音を忘れる」とか「吃音を意識しない」のは難しい、、というか無理だと思っています。
吃音症状が出るのに意識しないというのは、目の前にりんごをおいた状態で「りんごのことを考えてはいけない」と言っているようなものです。
なので、少し工夫が必要です。このあたりはもっと深い脳科学的な知識が必要なので、また機会があれば解説します。
※吃音治療のオンラインサポートに参加されてる人は「吃音を意識しない方法」や「鮮明に良いイメージするコツ」を書いた記事もあるのでみてください。