吃音は、発症する時は一瞬ですが、改善するのは少しずつです。
きっと多くの人の吃音のきっかけはすごく些細なものだったはず。小さい頃に発症した人はそのきっかけもすらわからないと忘れてしまったと思いますが…
吃音は「脳のプラグラム」によって引き起こされます。
例えば、電話で会社名を言うのに詰まった。という経験をすれば、そのことが頭から離れません。
すると、次の会社名を言う機会にも、以前の記憶がよみがえって「ちゃんと言えるかな。。。」と不安になってしまいます。
脳のプログラムと感情的インパクト
予期不安は過去のネガティブな経験から作られています。人前での発表で笑われた経験があるとか、真似をされて嫌な気持ちになった経験があるとかですね。
こんな感じで過去の経験から脳が学習をして、同じような嫌な気持ちになる状況を察知すると無意識に緊張をさせたりして「それは危険だ!」と身体に伝えます。
でも、状況的に、電話に出ないとか、発表をしないってことはできません。
結果的に、脳からは「危険だ!」と信号が来ているので、それでもしないといけないので、余計に予期不安が高まります。
でも、もし同じ状況でもネガティブな経験をしなければ予期不安が起こることはありません。
例えば、電話で詰まったとしても、相手の人からめちゃくちゃ感謝されたりすると、次の電話も「よし!次も役にたてたらいいな」と思うかもしれません。
状況は同じでも、その時の感情によって「脳のプラグラム」の書き換えのレベルが変わります。
■ 感情的インパクトが大きければ、少ない回数で脳のプログラムが書き換えられる。
■ 感情的インパクトが小さければ、たくさんの回数をすることで脳のプラグラムが書き換えられる。
という法則が成り立ちます。
吃音治療の難しさは常にネガティブな経験をすること
吃音治療の原理というのは、簡単に言えば「昔、犬に吠えられて怖い思いをした」ということを克服するのと同じです。
小さい頃に近所の大きな犬に吠えられて怖い思いをした。でも、大人になってから赤ちゃんの犬を飼い始めて成長過程を知ることで恐怖心が薄れていった。
原理的には、これを同じです。一種のトラウマの克服とも言えます。
でも、吃音治療の難しさは日常的にネガティブな経験をすることです。
「犬が怖い」というのは、過去の強烈なネガティブな経験をしたかもしれません。でも、この犬に吠えられるという経験はそこまで頻繁に起こるものではありません。
避けようと思えば、避けることができます。
これに比べて、吃音はなかなか避けることができません。学校や仕事をしていて話さないでいい環境というのはかなり少ないです。
なので、会話をして言葉に詰まるたびに「うわ、、、」と感じると思います。こんな感じで日常の中でネガティブな経験をする機会が多いのです。
この問題には2つの対策がある
この問題に対応するには2つの対策があります。それがこの2つ。
この2つの対策しかありません。これができないと予期不安は強くなっていきます。
それぞれをもう少し詳しく解説します。
1,ネガティブな経験以上のポジティブな経験を積み重ねる
これはネガティブな経験に対しての対応策はあまりせずに、それ以上のポジティブな経験をすることです。
でも、これはポジティブな経験の回数を増やすということだけではありません。さっきも示したように、脳のプラグラムへの影響は感情的インパクトも大きく影響します。
つまり、ポジティブな経験をした時の喜びや楽しさ、嬉しさといったプラスの感情を強く感じることが必要になります。
しかし、これは簡単ではありません。
人は元々、ポジティブな感情よりもネガティブな感情を抱きやすいという特徴もあります。もしかしたら、吃音で嫌な想いをして「死にたい」と考えた人もいるでしょう。
それにも打ち勝つことのできるプラスの感情ってなかなか難しいですよね。。。嬉しすぎて死んでもいい!くらいのレベルですかね。
このレベルのプラスの感動を常に体感するのはかなり難しいことがわかります。
2,ネガティブな経験を減らしながらポジティブな経験をする
2つ目は、ネガティブな経験を減らしながらも、ポジティブな経験も積極的に取り入れるということです。
現実的には、こちらがオススメです。僕の吃音治療のオンラインサポートもこちらの考え方でマニュアルやコンテンツを作っています。
逆に、もし吃音がでても「全く気にしない」。つまり、ネガティブな経験による感情的にインパクトが0にできるのであれば、吃音治療の成果はかなりのスピード感ですすんでいきます。
しかし、実際には0にはできません。「気にしない」と言っても「吃音が出ても、全く何も感じない」という人はいないでしょう。
なので、現実的なネガティブな経験での感情的インパクトが-100だったのをー70やー50というように下げることが必要です。
既存の治療法はどちらかに偏ることが多い
これは僕の個人的な意見になりますが、既存の治療法はどちらかに偏っていることが多いです。
例えば、幼児期の環境調整などはマイナスの経験の数や感情的インパクトを小さくしようとしています。
しかし、これだけではポジティブな経験を増やすことが不足しています。なので、悪化スピードを緩めているだけになります。
もし、この状況でたまたま上手く話せる機会が続いてポジティブな経験が積み重ねることができれば、改善することも期待できます。
それはあくまで偶然に頼ることになってしまいます。
逆に、発話トレーニングはどちらかといば、ポジティブな経験を増やすだけになっています。トレーニングが上手くできれば、きっと自信をもつことができます。
しかし、僕のサポートしてる人もみてても思うのですが、ポジティブな経験での感情的インパクトは少し小さいです。上手く話すことができたとしても、「よっしゃー!」って喜ぶ人がなかなかできない人が多いです。。
この原因は「慣れていない」からです。
きっと、今までは上手くできた時に「やったー!嬉しい!」という感情より「次はできるかな。」「練習ではできるんだけど、、」という気持ちになって、ポジティブな経験での感情的インパクトが小さくなりがちです。
もし、あなたが検討・実践している治療法があるなら、感情的インパクトを含めたネガティブな経験・ポジティブな経験を考えて治療法が設計されているのかチェックしてみるといいかもしれませんね!